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興味半分の極み管理人―ヒジリの行き当たりばったりな日々の一端を載せております。
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 ダイの大冒険二次創作の続きになります。
 ブログなども含め、真面目に文章を書こうとすると無駄に時間をかけてしまうので、
 今後も更新はゆっくりかつ、本文もお知らせ程度の話になるかもしれません。

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 並び立つ数々の店の中で行き交う人が織りなす喧噪。各種の店を目当てとして世界中の商人や冒険者が集い様々な品の取引を行うことで、豊かな物流が為されている。
 大国ベンガーナの一都市にして、この世界の経済の中心を担う港町だった。
 
 人並みの間を通り抜ける中で、様々な武具店や雑貨屋、飲食店-更には他の町では決して見られぬであろう高級レストランの類も目にすることができた。魔王軍の侵攻が進む中にあって、長い間の平穏を保ち、その内での繁栄により築かれたものだろうか。
 殺伐とした世を渡り歩いてきた者にとっては、その楽しげにも聞こえる人々の営みからあたかも異世界に迷い込んだかのような感覚に陥りさえもする程だった。

「ほーお、こんな立派な店もあるのな。」

 少女と共にこのベンガーナへと視察を兼ねて買い出しへと出かける中で、城にもにた趣の豪奢な建造物を前に筋骨隆々の偉丈夫-カンダタが感銘の声をあげる。
 最上部には、広告を主目的としているのか、バーゲン中という旨を記した旗を下げたアドバルーンが繋がれており、大いに人目を集めている。カンダタもまた例外ではなく、その旗印を最後の目標に町中を歩んできた。
 世界唯一のデパートと名高い国営のベンガーナ百貨店だった。
「はっはっは。なーに、どのみち俺らは田舎もんだ。今更目立つことなんざ恥ずかしいことじゃあねえよ。」
 彼の傍らに控える、鋼鉄の鎧を纏った少女もまたこのベンガーナの盛況ぶりに圧倒されていた。ここに至るまでの町並みも物珍しく、幾度となく目移りしそうになっていた。魔界で僅かに勝ち得た地とは比べ物にならない広さの都市での人々の営みを前に羨望の念をおぼえていた。
「さあて、何から見てこうかねえ。」
 全五階層の広々とした空間に、所狭しと並ぶ数々の専門店。1階は食料店街、2階は書店街、3階は日用品街、4階は武具店街、そして5階は衣類街と、区画毎に選り選られた店が立ち並んでいる。世界一の商店街と言えるこのデパートへの期待を、ますます膨らませていく。
「嬢ちゃんも化粧品やら装身具かなんか買ってってもいいんじゃねえかね。身だしなみは大事だろ?」
 戦乱に満ちたこの世界で、ここ以上の品揃えの店舗はない。この世界各地の名産品が集い、様々な食材を見ては目を輝かせ、未知の魔道書を見ては興味を示し、切らしていた日用品を思い出しては補充する。折角訪れた以上は彼女にも存分に買い物を楽しんでもらいたいと思っていたが、期待以上に夢中になっている様子を見て、カンダタも連れてきた甲斐があったと安心しきりだった。
「武器ねえ。正直言えば、その”破邪の剣”以上のモノなんて、そうそう売ってねえ気もするけどなあ。」
 ひとしきり見終えた後、カンダタ達は武具店街へと足を踏み入れていた。鋼鉄の剣を始め職人が手がけた品々が陳列されており、量産品を多く扱う地方の武具店と比較にならない高級店が出揃っていた。
「バトルアックス……んなゴツいのでも拘らねえか。」
 様々な武具を手にして眺めること数分、少女は大斧を抱えて戻ってきた。無骨な片手持ち用の木製の柄に釣り合わぬ、先端にも刺突用の刃を持つ実戦的な肉厚の斧だった。
「ははっ、嫌いじゃないぜそういうとこ。……ん?」
 年頃の少女である一面を覗かせながらも、一介の戦士としての拘りを前には決して妥協しない。女だてらに優れた武器の使い手である由縁はそこだろうか。そう感心したその時、彼女の後ろの人だかりのにぎわいが一層強まった。
「ほう、オークションか……モノはなんだ?」
 何かを囲むようにして多くの者達が集まっている。裕福な商人や戦士が多いことから、それがその品を求めて集まってきた、オークションの客であることが窺えた。
「……ありゃあドラゴンキラーだな。随分無難な店ばっかと思ってたが、あんなのも売ってるとはねえ。」
 ドラゴンキラー、腕に嵌めて持ちいる手甲のような先に精錬された金属の剣を取りつけた、貫通力に優れた武具だった。鋼鉄以上の強度を持つドラゴンの鱗をも斬り裂くという触書だけあって、非常に優れた品である。
「あの武器にも興味持つあたり流石だな。……が、あんなん競ってたら金が幾らあっても足りやしないぜ?」
 少女もまた例外ではなく、ドラゴンキラーに見入っていたが、カンダタは流石にその高価さを知らずに目を輝かせる彼女に呆れを隠せずにいた。ドラゴンキラー一つを以って15000ゴールド、逸話にある優美な石像やや頑丈な幌馬車一つすら買える程の価値があった。

「ふん、あんた達もあのバカどもの仲間入りをしようって?」

 残念そうにうつむく少女へと不意に、しわがれた声の小馬鹿にしたような声が届いた。振りかえると、そこには魔法使いのそれを思わせる黒いローブと三角帽子を纏った老婆がいた。
「だいたいそんな見てくればっかりの鎧なんて邪魔になるだけじゃろうに。そんなん着て強くなったつもりになっちゃいないだろうね?」
 少女の纏う鋼鉄の鎧、脚絆や手甲は隙間ひとつない堅牢な作りとなっており、頑丈な布で拵えられたスカートやマントもまた単なる装飾に留まらない、全体として堅牢にして質素な騎士のような出で立ちだった。
 それを纏っているのがまだ未熟さを垣間見れる少女であるのが余程気に入らないのか、老婆は鎧を小突きながら責め立てるようにそう告げてきた。
「いやいやそうでもねぇもんで……って、おいおい落ち着けよ嬢ちゃん。……まさかんなことに頓着してるとはなあ。」
 唐突に辛辣な言葉を投げかけてきた老婆をカンダタが宥めようとしたその時、少女は怒りを露わに老婆を睨みつけて詰め寄っていた。今度は少女の襟首をつかんで引きとめながらも、彼女が鎧一つで激されたことを意外に思わずにはいられなかった。
「大方ファッションか何かと勘違いしてるんじゃないのかい?そんな見かけ倒しで何が出来るって?何?素人丸だしじゃないかって!?バカをお言いでないよ!!だいたい……ってメルル!何すんだい!!」
「あー、はいはい、二人とも落ち着けよ。あっちのお嬢ちゃんが困ってるぜ?」
 老婆の悪口に負けじと皮肉る少女との口論は激しさを増すばかりで終わる気配がない。流石に見かねたのか、カンダタは少女の口を押さえながら後じさり、老婆の傍らにいる人物を指差しつつ双方の当事者を諌めた。
「ご、ごめんなさい……祖母ナバラはいつも口が悪くて……」
「気にすんなよ。今のはこいつも悪いんだからさ。」
 雑言罵言を吐きたてる老婆-ナバラを心配そうに覗きこみながら抑えている、メルルと呼ばれた娘が謝意を述べながら頭を下げてくる。こちらも少女が老婆の言葉に過敏に反応してしまったこともあり、カンダタもまた素直にメルルへと返礼していた。
「フン、そっちのだって見てくれだけの筋肉ダルマなんじゃろ、どうせ。」
「はっはっは、それも漢のロマンって奴ですぜ、……ってコラ嬢ちゃん!おーちーつーけー!!お前はしつけのなってない犬か!!」
 引きとめようとする彼もまたナバラの嫌味を受けるも、気にするどころか褒め言葉として受け取っていた。だが、カンダタの悪口を受けた少女はますますいきり立ち、押さえつける手の中でじたばたしながら喚き出していた。
「ふふっ、あなたはお父様が余程お好きなのですね。」
「そう見えるか?ま、こいつの親父とは違うけどな。」
 あたかも父を侮辱されて憤慨する子供のような少女の姿を急にほほえましく思ったのか、メルルは温和な笑みを浮かべていた。橙色の薄衣で拵えられた占い師の衣を纏い、背にまで届く長く艶やかな黒髪に白銀の髪飾りを戴いた、物静かな少女だった。
「もう売れたみたいだな。随分と粘ってやがったみたいだが、どっかの姫さんかねありゃ。」
 連れの少女とナバラがにらみ合っている間に、ドラゴンキラーは闘いとはまるで無縁な富豪の下に落札されていた。それを悔しげに見つめる一行、その筆頭は悔しげに唇をかんでいる金髪の少女だった。通常の旅人の服に比べても装飾品がいくつも付いており、その着こなし一つとってもいかにも身なりの良さを感じさせる。
「鼻タレ坊主はともかくとして……なんだあのちんちくりんは。嬢ちゃんの真似事でもしてんのか?……だよなあ、明らかに分不相応な装備だろ、おいおい。」
 そして彼女の同行者として、短い魔杖を携えて黄色いバンダナを巻き緑色のローブに身を包んだ魔法使いの少年と、全身を鋼鉄の鎧に包んでぎこちなく動いている小柄な少年の姿があった。共にどこか都市に慣れてないように見受けられ、ぎこちない雰囲気を感じ取れた。
 何より目を引くのは少年の方の出で立ちだった。全身を堅牢に守っている点は少女のそれと同じだったが、金属同士が擦れ合う音を立てながらおぼつかない足取りで歩む姿からは、無理やりに着込んでいるだけの印象を受ける。流石にカンダタも似たような少女の出で立ちと見比べてもそれを種に笑うこともなく、彼女もまた少年の分不相応な装備に呆れを見せていた。

「!!」

 オークションに参加していた少年少女一行を見て二人が顔を見合わせていると、不意にメルルが短く悲鳴を上げながら顔面を蒼白にしているのが見えた。
「どうしたんだい、メルル!?」
 尋常ならざるメルルの様子に、ナバラが引き攣った表情を浮かべながら尋ねていた。それは単に彼女の身を案じるに留まらず、得体の知れぬものに対する怯えのようなものすらも垣間見れた。
「そんな、もうすぐ近くまで!?……いけない!あなた達も早く逃げ……!!」
「!?」
 焦燥を露わにする様に怪訝な顔をするカンダタ達にメルルが警鐘を発したその瞬間、辺りが大きな揺れに襲われて、程なくして床に罅が入ってそのまま崩落した。


 ベンガーナ百貨店の地下から突如として現れた赤い鱗に覆われた幾つもの柱の如きもの。それは最下層から屋上に至るまでを一瞬にして貫き、内部へと燃え盛る炎をも捲き散らしていた。
 商店街を行く中で平穏を堪能していた人々は、突然現れたその脅威に対して何も出来ず、ある者ほ天高く打ち上げられ、ある者は炎に巻かれ、またある者は崩れ落ちる瓦礫に押し潰されて呆気なく絶命していった。
 生き延びた人々も、恐慌に陥ったまま空を仰ぐと共に見たものを前に更なる恐怖に駆られ始めた。

「ひ、ヒドラだああ!!!」
「う、うわあああああああ!!」

 そこには赤い首を有する竜が、口に炎を含んだままこちらを睨みつけているのが見えた。その背後にもまた、同じ姿を持つ四匹の竜…否、胴を同じくする四つの竜の頭部が控えていた。襲撃者たる五頭の竜-ヒドラに怖れをなした人々は混乱を深めたまま無秩序に逃げ惑い始めた。
 そのおぞましい姿を見て尚も勇気を奮い立たせて立ち向かう者達もいたが、彼らの武器は鋼鉄のような鱗により弾かれ、そのまま爪牙にかかるか炎の餌食になっていく。

 気が付いたら、砂塵の舞う瓦礫の中へと生き埋めにされていた。鎧に守られていたお陰で五体満足で済んでこそいたが、兜もなしに瓦礫を頭にも受けてしまったのか、鈍い痛みを感じていた。
「ホイミ」
 痛みに呻きながらも、意識を苛むその痛手を癒すべく、少女は呪文を唱えていた。体の内の活力を高めて傷をも癒す回復の力、ホイミ。呪文の才を持つ冒険者にとっては特に重宝するものだった。

「じょ、嬢ちゃん!無事か!?」

 不幸中の幸いか、自力で瓦礫の山からどうにか抜けだしたところで、カンダタがこちらの姿を確認して慌てて駆け寄ってきた。幾分土砂に塗れてはいたものの、傷を負った様子は微塵もない。あの状況から己の身ひとつ守ることすら手慣れいるようだ。
「これがお前さんが言ってた”超竜軍団”ってヤツか……。こりゃあカール王国も一週足らずで滅ぶわけだぜ。ここもそう長くはねぇな。」
 少女の無事を確認すると、カンダタは今近くで暴れているヒドラとは違う方向を示していた。


 ベンガーナ市街を守るべくして建てられた港や街道を面にした城塞の数々。その中で、兵士達が大砲を海から現れた怪物に向けて斉射している。だが、その怪物-別のヒドラに対して砲弾は通らず、また爆炎もその守りを破るには至らなかった。
「おおう!!急拵えとはいえ我が花火に耐えようとは、流石に伝説に謳われるだけのことはあるのォッ!!ウワーハッハッハッハ!!」
「そ、そんな悠長なこと言ってる場合じゃ……どわあああああ!?」
 人間の科学力から生みだし得る最強の武器の一つですら、竜に通じる様子がない事に一人が感銘を受けている間に、城塞に向けて突如として別の巨大な濃緑のドラゴンが体当たりを仕掛けてきた。圧倒的な巨躯の重量と突進の勢いに任せた一撃により、石壁は容易く打ち破られて、内側から呆気なく崩されていく。
 そして、次々と砦を崩したドラゴン達は、そのまま市街地に向かい始め、目に映る物を手当たり次第に破壊し始めた。


「ありゃあキースドラゴンじゃねえか……。幾らなんでも駆けだしボウズに勝てる相手じゃねえぞ……。」

 ベンガーナを襲ったドラゴン達の中でも特に体が大きく鱗の色も濃緑である一体を見て、カンダタは焦りを露わにしていた。キースドラゴン。勇者と呼ばれる類の者ですら葬り得るだけの力を持ち、ドラゴン種の中でも上位に位置する脅威であった。
 この混乱の内にあって、尚も抗おうとする者達-先のドラゴンキラーを巡って争っていた少年達もいるが、下位種のドラゴンやヒドラに手間取っているような実力で勝てる相手ではない。
「嬢ちゃんは先に逃げとけ。あいつもこの近くにいるはずだろ?」
 背負った得物-少女が持つそれよりも二回り程も大きい戦斧を手に取り、頭部全体の防護を兼ねた覆面を被りながら、カンダタは少女へとそう告げていた。
「俺か?あいつとちょいと遊んでくらあ。流石にアレを放っておいたら逃げるにもキツいだろう?」
 自分はどうするのかと問い返すと、カンダタ自身はあのキースドラゴンに挑んで時間を稼ぐつもりらしい。その腕が確かなことは彼女自身が一番良く知っていたものの、別格の竜に挑むとなると不安を隠せなかった。
「はっ、なめんなよ!あのデカブツ如きに遅れを取る俺様じゃねえ。お前さんこそ気をつけて行けよ!」
 心配するなとばかりに意気込んで見せながら、少女にもまた注意を呼び掛けていた。キースドラゴンはともかくとして、ドラゴンやヒドラを相手取るにも彼女の実力では十分に危険なのは間違いない。
 元より異世界の人間達のために戦う意思はなく、単に逃れるための戦いに過ぎない以上は、機あれば逃げるだけのことだった。
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