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興味半分の極み管理人―ヒジリの行き当たりばったりな日々の一端を載せております。
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Q5.それを見て一言。

 個が集いて衆とならば、各々の個が宿す要素は総じて失われる。
 全てが無双の存在であるそれぞれの木々でも、寄り集い巨大な樹海の内ではその個性は無きに等しいものでしかない。
 一つ一つの個が湛える小さな波をことごとく静寂に帰すこの場に闇雲に踏み入れようものならば、流れなき深緑の牢獄にたちまち捕えられる事になる。

―こっちか。

 深き森を進む一人の少年。彼がその入り口に踏み入ってから、既に三日の時が経とうとしていた。
 だが、この無明の闇の如き魔境にあって明確なる標を得たかの様に、その足取りははっきりとしていた。
 地面を踏みしめる音の微細な違いをその耳で感じ、緑の瞳が捉える光景にある小さな歪みの如く違和感の源を、培ってきた判断力を以って評し、進むべき道を決める。

「さて…」

 暫く足を進めたところで、少年は何となしに近くに佇む大木に目をつけて、その根元へと腰掛け、担いだ荷物を降ろした。
 辺りに魔物の気配はなく、小休止には丁度いい静かな雰囲気であった。

「これが、最後だな…。」

 袋の中から取り出した小麦色の物が発するほのかに香しい匂い。自分を助けてくれた女性―ディルジが焼いたパンは、既に本来持つ魅力を失っていた。
 程よい歯ごたえを持つ乾いた食感は、森の湿気を長く浴びている内に無くなっている。
 それでも、決して無駄にはしまいとしっかりと袋の中で守ってきた甲斐あって、十分食糧としての役目を果たしていた。

―…流石に、もう長くはもたないな。

 金髪の少女のパンを少しずつ千切ってかじり、糧とするべくして途中で集めた木の実を割った中にある身を食しながら、少年は自らが置かれている状況をそう捉えていた。

 背負った袋の中身は既に殆ど空っぽである。途中で道具として拾い集めたものも、幾度か出遭ってしまった魔物との戦いでその役目を果たして失われていった。
 お陰でこれまで深い傷を負う事も、毒に身を苛まれる事もなかったが、結局手元には何も残っていなかった。
 これでは食糧も何もかも失って行き倒れたあの時と、何ら変わりはない。

―あとは…

 自らを振り返る最中にふと気にかかった腰の小さな巾着袋の中に入っているのは、森に入って最初に手に入れた青色の草であった。
 他の数々の有用な道具達が使命を果たしていく中で、手元に残った唯一の物。
 何の変哲もない何かの薬草を、少年は今も尚、その身に帯びていた。

「さて…、どうしたものだか。」

 残っていた食料の全てを胃の中へと収めたところで、少年は無感情にそう呟きながらゆっくりと立ち上がった。
 どのみち帰るべき道はない。ただ前に進む事が、今の少年の全てであった。


「…ん?」


 ふと、近くに布の切れ端の様なものが落ちているのが目に付いて、少年は足を止めた。
 それは、引き裂かれた誰かの外套の一片であった。黒地の布の欠片に、微かに血の匂いが付いている。
 彼は、その元を辿るべくして辺りを注意深く見回した。

「これは……」

 すると、そう遠くない位置に、更に多くの黒い欠片が落ちているのが見えた。近くにはその主の亡骸と思しき白い石片が見受けられる。
 おそらくこの者もまた、この森の中に迷い込んで苦闘を続けてきた果てに傷ついて力尽きたのだろう。

「………。」

 何者にも看取られる事なく孤独に死す。それが、道を誤った冒険者の末路というものなのかもしれない。

「何を、今更…」

 ふっと頭の中に再び過ぎった不安を払拭しながら、彼はそう一人ごちた。
 そして、近くに落ちていたものの数々を物色し始めた。

 見た事もない様な固く不思議な素材ながら、どこか貧相さを醸しださせる指輪。
 入れ口が星型になっており、全容は妙にくびれた形となっている奇妙な壷。
 先端にひび割れた紅い魔石が埋め込まれた以外は何の変哲もない檜の杖
 外側に雄叫びを上げる豪壮な顔つきの熊の姿が描かれた巻物。
 食卓で馴染み深い食器を更に大きくした様な、鈍い銀色の三叉の鍬。
 そして…所々に割れ目が生じて脆さを感じさせる、大柄ながらも儚い印象を与える大盾。


「俺は、生きるんだ…」


 これらが、この今は亡き冒険者の唯一の形見と言える品々であった。
 しかし、少年はその様な感慨など一切感じぬままに、それらを拾い上げて袋の中へとしまい込み、そのまま先へと進んでいた。

 この生を許さぬ秘境の奥底で生きるには、一つでも多くの道具が必要である。ただそれだけの事であった。





 拍手ぱちぱちありがとうございます~
 まぁ、場所が場所なんで、閑古鳥が鳴くのは仕方ないたぁ思うんですがねぇ…。
 数日コンスタントに続いていた拍手がぷっつりと切れると…べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!!(壊)

 むぅ、だめだ…、どうもシメが上手くいかない。これじゃあただの追い剥ぎじゃ…。
 不思議のダンジョンの中では時折鬼にならねば生きていけない事もあるのですよ…(遠い目)
 まぁ…流石に腹減りじじいをじぇのさいどしなくても生死に関わる事ぁないですけどねぇ(渇笑)





 訃報がニュースにまでなる小説家さんの死…ですか。
 見聞きする限りでは、繊細な部分に渡るまでに相当に入り組まれた世界観の作品を書かれていたのですかね…。

 ごめんなさい、私には何もわからないです…。狭い世間にしか生きていなかったせいか、これを知る事は今の日までありませんでした。
 ですが、惜しむべき人を亡くしたものではないかと切に思います。
 かの大河小説が終わる事ない作品となったのを残念に思う方も多いでしょうね…。作者様ご本人が望んで書かれていたものであれば尚更。

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Q4.途中で変なアイテムを発見。そのアイテムを簡単に説明してください。

 切り開かれた地の周りを覆う、深い樹海。
 ここに住んで長きに渡る者達でも、一度迷い込んでしまえば二度と出る事は叶わず、そのまま力尽きて森の土となるのを待つばかり。
 その様な云われさえ漂う危険な秘境の中を、一人の少年が何の怖れも垣間見せずにただ黙々と歩いていた。
 少女が最後に自分のために焼いたパンのみを携えた他は何も持ち込んでいない、そんな無防備な姿を捕食者達にさらしながら、彼はひたすら樹海の奥深くへと突き進んでいく。

「ぴきーっ!!」

 その最中、不意に前方から飛来してくる何者かの存在を感じ取れた。
 弱き体に必死の敵意の全てを込めて、雫の姿の不思議な生き物―スライムは少年に捨て身でぶつかりかかった。
 
「おっと。」

 だが、少年は肩を軽く引きながらすれ違う様にして魔物の攻撃を難なくかわしていた。

「無駄だ。」

 行く手を阻む事に対する覚悟の現れか尚も飛び掛ってくるスライムへと振り返りながら、少年は渾身の力を拳に込めて前方へと繰り出した。
 幾度も降りかかる荒事を切り抜ける中で磨きぬかれた一撃が、小さな魔物へと直撃して大きく後ろへと吹き飛ばた。
 それはそのまま地面を転がって、近くにある大樹へとその身を打ち付けられた。

「…ぴぃ……」

 弱弱しい鳴き声を最後に残しながら、スライムはそのままその場から動かなくなった。
 傷を負って動けなくなったその恐怖を、大きな瞳の内から感じられる。
 それは、まさしく最も弱い魔物と謳われる彼らのか弱さを象徴しているかの様であった。

「……大丈夫、だな…。」

 微かに痛む拳が発した力に確かな手ごたえを感じながら、少年は表情を変えずとも少し安心した様子でそう呟いていた。
 病み上がりで弱ったとはいえ、この一撃はどこかで確信をもって放つ事ができた。これならば、勘を取り戻す事もそう遠くはないだろう。
 厳しいこの世界の旅路を生き残ってきた旅人であるならば、幾度全てを失おうとも旅の中で再び蘇る。或いは今、それが試されているのやもしれない。

「悪いな、これはもらっていくぞ。」

 木々の隙間に、周囲のものとは姿を異にする藍色の草が生えている。
 その根元を掴んで引き抜きつつ振り返りながら、少年は今しがた倒した魔物に対してそう告げていた。
 野に生える草とて、彼らにとっては貴重な食糧である。だが、倒れて全てを失った少年もまたこれを今必要としていた。
 
 やがて、この一つまみの草が、来るべき時に大切な役目を果たす事となる…かもしれない。




 いーひー はーべー ふんがー……(激壊)
 腹減った~…めしー…節制やめた方が良いかなぁ…。
 やー…Javascriptは、やばすくりぷと…(更に壊)。
 もはや何言ってるかもはっきりしNeinですぜ、私は…。




 コホン、ともあれまたこうして小話に手を付けられたのは行幸なわけで。
 とっさの思いつきで予定より大分短くなったのも、また嬉しいもので。長ったらしいのも頂けないですからなぁ。


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Q3.連れて行く仲間は何と言う名前ですか?(何人でも可)


 下卑じみた笑い声が、この地を踏みにじる音と共に次第に大きくなっていく。
 到来してきた招かれざる客は、ただ獣の如く目に映るものを貪るかの様に里を蹂躙し始めている。

「…あいつら、また…!」

 駆け込んできた男の警告を受けて、ディルジはその端正な顔を険しく歪めていた。

「ああ、じきにここも狙われる!すぐに…」
「…分かってる!今度は…私が…!」

 樹海の里人達にとってこの上ない厄介者達の”再度”の到来が、激しい焦燥感を生む。
 一刻も早く逃げなければならない状況である事は、二人の会話を聞き届けるより先に理解していたつもりだった。

「…あんたが?何故…?」

 一方、ディルジが思いつめた表情で俯きながら言い放った言葉の意味が気にかかり、少年は彼女にそう尋ねていた。
 この場に踏み込まんとする者達の目的、どことなしに分かっていた様な気はしていたが、思わずそう訊かずにはいられなかった。

「ディルジは狙われてるんだよ。奴らにな。」
「やはり、娘攫いか…」

 体に宿る力は男性よりも総じて弱く、捕らえられやすい。また、男性にはない多くの魅力を買われて人身売買の折には聞き分けの良い子供共々、高い値打ちで取引され、売り払われた先で良いようにされてしまう。
 そうした数多くの理由から、若い女は総じて略奪の対象となりやすい。
 ここでもし捕らえられてしまえば、ディルジの希望は失われてしまう事だろう。

「坊主、巻き添えを食いたくなければお前も隠れておくんだ。いいな?」
「………。」

 相手は己の欲を満たすためならば如何なる悪行にも手を染める正真正銘の悪党である。少しは旅慣れているとはいえ、成長途中の少年や、平穏の内に過ごしてきた里人がまともにやって勝てる相手ではない。
 余所者である自分にまでそうして気を回してくれる男の心遣いは、一体何処からきているのだろうか。

「…もう、遅かったみたいだな…」
「なに…、…っ!?」

 だが、既に近くにまで足音を感じ取った少年には、その思いを満足に味わう暇などなかった。
 少年が険しい視線を向ける先を見やった瞬間…


「でりゃあああああっ!!」


 渾身の力を全身に溜めた後に打ち下ろされた巨大な斧。それは、眼前の木の壁など一瞬で叩き割ってしまう程の勢いで、その衝撃で混乱の悲鳴を上げるように、家中が騒ぎたて始めた。


「へっへっへ、…見つけたぜぇ…ガキ共ぉ。一番乗りは頂きだなァ。」


 撒き散らされる木片と共に現れたのは、多くの者を捕らえてきたであろう巨大な腕と、小山の様な体躯を有する大男であった。
 目に爛々と輝く光は、真っ当な道を歩んできた者のそれではない。手にした斧もまた、尋常ならざる程に刃毀れと血吸いの跡が目立ち、見るものを怯えさせるには十分過ぎるものであった。


「何てこった…」


 醜悪さを感じさせるまでに巨大なその体躯と、下卑じみた笑みを浮かべる顔が、人食いの獣以上の凶暴さを醸し出している。
 同時に、弱者を虐げるに事足りないまでの暴力を幾度となく振るってきた事によって歪められた人の情―残虐さを増しているのが感じられる。
 大きな斧も、その男が握るとあたかも小刀の様に小さく見えてしまう。
 その様な圧倒的な相手を前には、大抵の者はなすすべもなく驚き留まる事しかできないだろう。

「ぐっへっへっへ、大人しく女を寄越しなァ。さもねぇとてめぇら皆殺しだぜえ?」
「…誰が、あんた達なんかに…っ!!」

 男は大斧をちらつかせながら、三人に告げながら下品に笑いかけた。
 だが、この威圧に屈してしまっては、この先に何があるか分かったものではない。
 ディルジは近寄ってくる男を前に後じさりながら強く拒絶の意を示そうとした、そのときだった。

「ホレス!?」
「………。」

 手を伸ばそうとしてくる男の行く手を阻む様に、怯えを見せるディルジを庇う様に、彼はその両者の間へと割って入っていた。

「んぁあ?誰だァ、クソガキ?」

 驚きの声を上げる少女を他所に、大男は黙したまま立ちはだかる銀の髪の少年を見下ろしていた。

「………。」
「…な…なんだぁ…テメェ…」

 だが、少年はどれ程大男が迫ろうと、一歩も引こうとせず、ただただ侮蔑の眼差しをもって相手を睨みすえていた。
 逆に前進しようとさえする気迫に、大男は思わず気圧されて後じさっていた。

「…やめろ、坊主!お前が叶う相手じゃ…!」
「邪魔ずんなぁああっ!!」

 だが、それが大男を余計に激昂させる結果となってしまった。
 制止しようとする声も虚しく、大男は少年へと大斧を振り下ろした。

「―――っ!」

 肉厚の刃は、少年の胸元へと思い切り叩きつけられた。
 それをまともに受けた彼の口から、一抹の血が吐き出される。

「嫌ぁあああああああっ!!ホレスーーーーーっ!!!」

 ディルジの悲痛な叫びを聞いたのを最後に、少年は意識を闇の内へと落とされた。







「……っ…く…。」

 だが、それでも彼が死ぬ事はなかった。

「気がついたか!坊主!」
「…どうにか…。」

 微かに胸の辺りに苦しみを感じながらも、少年は確かに生を留めていた。
 身につけていた胸当ては大きく拉げていたが、代わりに斧の斬撃の威力を大きく削り取ってくれた様だ。
 少なくとも肋骨が折れていても可笑しくない一撃を受けて、大した傷を負わずに済んでいる。
 行き倒れた時に続いてこうまで来ると、つくづく運がいいと感じられる。

「ディルジは?」

 だが…

「これで…もう五人だ……。くそ…っ!」
「…五人、か…。」

 この幸運と引き換えにして、自分にそれを授けてくれた少女は攫われてしまった。
 無力を噛み締めるディルジの知人の男の姿に、この里が見舞われた不幸が目に見える様であった。

「全く…冗談じゃない……。」

 生き延びる事こそできたが、結局は人攫い達の思い通りにさせてしまった。
 それに少年は舌打ちしながらゆっくりと立ち上がった。

「…お、おいっ!?坊主!!何処へ!?」

 そのまま出て行こうとする彼の姿を見て、男は思わず引き止めずにはいられなかった。

「まさか…ディルジを助けに…っ!?お前…死ぬ気か!!」

 少年が向かう先には、先ほどディルジが焼いたパンが入ったバスケットがあった。
 それを一つ一つ丁寧に包み、自らの荷物の中へと入れていくのを見て、彼がすぐになにをしようとしているのかを察した。

「…そう簡単に死んでたまるか。助けられた以上は…何としてでも…」

 彼女がいなければ、自分はあの場で野たれ死んでいた。
 情に薄いつもりでいる少年とて、こうして救ってくれた恩を忘れたつもりはない。
 
 ディルジの縁の者が止めるのも聞かず、彼はただ一人で樹海の中へと入っていった。








 冒険バトン…一回一回がやたらと長くなりまくっとります…むぅ。
 もう少しすんなりいくと思ったのですけどねぇ…。

 代わりに執筆速度は少々上がってる気もしますが。

 私信>掲載許可、ありがとうございます!!次回更新時に上げさせていただきます!

 そんにしても…睡眠のとり方、昔あんなに拘ってたのに今ではまた逆戻りして悩んでますよ(壊)

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Q2.あなたの職業と、装備品は何ですか?

 木の枠組みによって窓に留められたガラスを通じて差し込む陽光が、白い布へと差し掛かり、照らし出すものへと温もりを与えていく。

「ねえ、ホレスはどうして旅をしているの?」

 そうした母の胎内にも似た快適な寝床の内に身を委ねる中で、少年は、傍らに座る綺麗な金髪の少女―ディルジにそう尋ねられた。

「多くのものを知り、手に入れる。ただ、それだけだ。」

 それに対するホレスの答えは、至極単純にして深いものであった。

「よく分からないけど、たった一人でえらいわねぇ。」

 ディルジもまた、少年の言葉に込められた意味を捉えかねていたが、それでも目的あって彼が旅している事をどことなしに感じる事ができた。
 そもそも、ホレスの答えは旅に身を置く冒険者のみが返しうるものではない。探し求める事は、何も旅だけに限られたものなどではなく、この世を彷徨う多くの者が常々行ってきた事と言える。だからこそ、違和感なく伝わったのかもしれない。
 少なくとも、旅を始めてから一年程度を過ごしただけの、若輩の冒険者の未熟を感じさせないものであった。

「あら、あなたの着ていたものならそこにかけてあるわよ。随分ボロボロだったから、少し直させてもらったけど。」

 ふと、ディルジはホレスへとそう告げていた。
 時折しきりに自らの衣服を改めるその様から、少年が思うところをすぐに察した一言だった。
 指差された方を見やると、橙に染め上げられた厚手の旅装束と裾と袖元が擦り切れた黒の外套が壁に架けられている。死の猟犬によって傷つけられたはずの三筋の跡は綺麗に縫い合わされていた。
 また、その下には丁寧に畳まれた黒の上着とズボンと、脚絆や手甲と言った身につけていたものが安置されている。

「そうか…。すまないな、余計な手間をかけて…」
「もう、余計って何よ。可愛くないわねぇ。」

 行き倒れたところを助けてもらったばかりか、衣服を整えてまでくれた事に感謝の念を覚える。
 が、素直に礼を告げるつもりが、要らぬ事まで零してしまった事が少々気になったのか、ディルジは腰に手を当てて怒った様な仕草を見せた。

「着替えたら少し待ってて。ご飯にしましょ。」

 だが、すぐに温かな笑顔へと表情を戻しながら、彼女は少年へとそう告げて、部屋の中から去っていった。
 その姿に、彼は微かにはるか昔に感じた温もりを感じた様な気がした。



「…これで、全部か。」

 ディルジがまとめておいてくれた衣服を身に付けながら、少年は袋の中に収められた手持ちの品を改めた。

―手ぶらと変わりないか、これは。

 樹海を彷徨う中で、武器や薬草などの道具や食糧までも尽き、残っているのは僅かばかりの路銀だけであった。
 おそらく大きな町の市場辺りにまで行けばまたそうした品を買い揃える事もできるかもしれないが、それまでは恐らくこの何もない状況を切り抜けなければならないだろう。

―さて、どうしたものか…。

 せめて食糧だけでも調達しない事には、この先の旅は厳しいものとなるだろう。

―いずれにせよ、動かない事には始まらないか。

 とりあえず、一度旅の中での食糧を用意してくれる様に頼み込んでみよう。そのための見返りを求められるならば、相応の事は覚悟しているつもりだった。
 或いは行き倒れた自分を勝手に助けたあのお節介な少女ならば、言わずとも勝手に用意してくれるかもしれない。
 いつしか辺りに漂う香ばしい匂いを感じながら、彼は部屋から出ようとした。 

「…ん?」

 だが、そのとき遠くの方から何か物音が聞こえてくるのを感じた様な気がした。

―……大勢の足音?それに…

 その耳は、確かに樹海の内に切り開かれた辺鄙な里へと忍び寄る者達の気配を感じ取っていた。そして、急速にここに近づいてくる様な、段々と大きくなる一人の荒い吐息と、土を蹴る靴音。

― 一体何が…?

 その穏やかならぬ予感を漂わせている物音を前に、少年は戸惑いを隠せずに様子を伺いながら、ディルジの待つ食卓へと歩みを進めた。


「逃げろ、ディルジ!人攫いどもが来るぞ!!」


 程なくして、扉が乱暴に開け放たれた音と共に、怒声にも似た男の切迫した叫びが、少年の耳を強く打った。

「おじさん!!」

 同時に彼が目にしたものは、駆けつけてきた中年の男の来訪への驚きのあまり、手にした焼きたてのパンを取り落としそうになっている、金の一つ結びの若い女の姿であった。




 持込みなしこそ、不思議のダンジョンシリーズの浪漫というものじゃあ!!

 持ち込みありのダンジョンで怖いところと言ったらば、盾が貧弱だったりケンゴウやがいこつ剣士系に弾かれたり、ゲイズやだいまどうなどに催眠で勝手に投げさせられたり変化の壷に入れさせられたりされると…深層で700ダメージとか余裕でいけるトコですからねぇ…。
 トルネコ3じゃあ弱化のワナなんて怖い子もいますから。あれが対策なしで終盤で出てくるとまずオシマイです。不思議の宝物庫深層で、ロトの盾でも平気で200行きますからねぇ…。

 叙情的に書くのに慣れすぎて、本編がまたイメージ崩壊起こしそうだ…。
 さぁ、どうしたもんだぁ…??


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 外から見える一部からも、内に秘めたる何よりも深い闇を醸しだす、そんな深い森。

 その中に、ただ一人彷徨う少年の姿があった。
 頭に生えた銀の髪は、長く野に佇むその果てに汚れと傷で錆びついたかのように、その輝きを失っている。
 濃い緑を湛えた瞳には既に生気はなく、光なき樹海の内では映し出す光もなかった。
 そして、長きに渡って何も口にしていないその体は酷くやせこけて、暗い死の影が深く色づいている。
 
 だが、それでも彼は何も言わずに黙々と歩き続けた。死に逝こうとするその姿とは逆に、彼は確かに生きようと足を前に進めていく。

「…っ!こんなときに…」

 朦朧とする意識の中、前方に魔物の気配を感じ取り、彼はすぐさま身構えた。
 既に手持ちの道具は殆ど失い、残ったものはこの身を守る最後の牙…常々多く用いられてきた古びた小振りの剣だけであった。

「デス…ジャッカル……か…」

 死した後に光の理に反して蘇らされて、腐敗の中で滅びを待つだけの血塗られた猟犬―デスジャッカル。
 群れからはぐれて獲物も見い出せずにある末に飢えた一体が、待望の時にようやく糧に巡り会えた歓びの唸りを上げる音を、彼は静かに聞いていた。
 互いに飢えて倒れようとしている身。勝ち得た者だけがこの場を生き残る弱肉強食の理。それはこの場においても裏切る事なく存在していた。

「……こ…の…!!」

 不意に飛び掛ってきた死した猟犬の爪牙をかわし切る事は叶わず、彼はその身を守る黒の外套ごと、肩口を引き裂かれて三筋もの傷を負い、苦悶に表情を歪めた。

―まずい…

 それが宿す毒素は、獲物を捕らえるべくして己が身の内で練り上げし蠍や蜂などのそれとは比較にならぬ程弱いものであった。だが、それでも自浄の能を失った腐敗の徒の爪も、死肉を貪る小さき者どもが宿るが故に決して侮れない脅威である。

「…ちぃ……っ!!」

 満足に手当てをする暇などなく、再び襲い来るデスジャッカルの攻撃を身を翻して交わし、黒の外套の内へと巻き込んだ。

「そこだ…!」

 行く手を遮る黒い布にぶつかって猟犬が僅かに怯んだ隙に、少年は短剣をその首筋へと勢い良く突き刺した。腐臭漂う死肉は、今の一撃で刻まれた傷より広がる皹によって壊れ始め、やがてはその体は湿気を多く含んだ様な重苦しい音と共に地面へと崩れ落ちた。

「…うぐ…ぅ…っ!!」

 だが、少年もまた、傷の激痛に耐える事はできず、肩口を手で押さえていた。どうにか身を立てようと足は地に着かずにあったが、それでも震えは止まらなかった。

「くそ…!!ここまで…か!?」

 飢えによって身を苛まれている以上、負わされた傷を自らの力で癒せる時も無い。
 しかし、死は元より覚悟して出でた旅の内でも、おめおめと命を捨てるつもりもない。
 彼は最後の力を振り絞って、必死に生への道を闇雲に探り始めた。

「…っ!?」

 …が、不意にその足元が虚空を踏むのを感じ取り、彼は思わず息を呑む。

「―――っ!!」

 正しい認識を失った今の彼の感覚では、そこにあった断崖の存在を正確に感じ取る事はできなかった。
 少年は吸い込まれる様にして、地の底へと落ちていった。





「…!」


 だが、それは決して彼の死を意味したものではなかった。

「……俺は…生きている…のか…?」

 開かれた目が映し出しているのは切り出された木々によって形作られた骨組みによる天井。
 横たえられた身を支えるのは白いシーツと柔らかい布団が敷かれた清潔なベッド。
 最後に目に映ったのは死出の道。そう理解していた彼にとって、今目の前に見える生に満ちるこの場は、全く解せぬものでしかなかった。

「あら、気がついたのね!」

 そのとき、甲高い歓喜の声が唐突に少年の耳を打った。そのかしましさに微かに顔をしかめながら、彼はその声の主へと振り返った。
 そこには、金色の長髪を後ろで束ね、前髪を綺麗に切り揃えた若い女の姿だった。年のころは、微かに感じられる艶やかさから見て、少年よりも幾分か上と見られる年齢であろうか。

「このまま目を覚まさないかも…って、心配したのだけれど、目を覚まして良かったわ。」

 たおやかな笑みを浮かべながら、彼女は手にした椀の中身を匙ですくい上げ、少年の口元へと運んでいた。
 清楚にして美しい、そんな慈母の様な、優しい姉を思わせる姿。
 だが、それを目にしても、少年の表情は全く変わる様子はなく、ただなされるがままにされていた。

 肩の傷は幾らか癒えたのか、既に痛みは大分引いている。
 しかし、今の彼には身を起こす気力は残されていなかった。大分汗を流したのか、身を包んでいる寝巻きは大分湿っているのが感じられる。
 その最中で体力が失われた…とあれば、このまま体の重みに身を委ねる他はない。それだけの事であった。

「わたし、ディルジ。あなたは?」

 運ばれてくる温かな糧を拒む事なく身に受け入れる少年を見て満足げに笑いながら、彼女―ディルジはそう問い掛けてきた。



「ホレス。」



 その問いに対して、彼はただ、静かに素っ気なくそう返すだけだった。




 唐突に始まりました、冒険ばとん。以下、お品書き…


冒険バトン
1.あなたは今から魔王を倒しに冒険に出ます、早速ですがお名前は?
2.あなたの職業と、装備品は何ですか?
3.連れて行く仲間は何と言う名前ですか?(何人でも可)
4.途中で変なアイテムを発見。そのアイテムを簡単に説明してください。
5.それを見て一言。
6.とうとう魔王の城へ。すると魔王の護衛部隊が出現!必殺技で全滅させよう!その必殺技の名前は?
7.ついに魔王と対決!相手に向けて一言どうぞ!
8.戦ってみると超楽勝、その原因は?


 いつか冒険に関わるバトンを書いてみたいと思っておりました。
 今一作目はプロットが立ったので幾分簡単に書けました。…その分長くなりましたので、これ以上多くは語れなかったものでござんすが。
 不思議のダンジョンテイストで書き上げようかと。

 ディルジ:Goldを逆に書いたアナグラムDlogを更に滅茶苦茶に加工したもの。Dilgy…か。ネーミングなんてそんなモンでしょー…(溜息)金髪ポニテで書いて見たわけですが、この先に果たして影響するかは微妙なところでござんす。




 で…こんなん手に入れてまいりました(壊)
 頂きものをこんなん言うて…酷いなあ、私は。

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